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没後40年 鴨居玲展 / ひろしま美術館



実は、全然違う人と勘違いしていて、ショップで前売券を買うときにチケットの絵を見てそれに気づいた。状況的に断りづらいのもあったが、なんだか闇に引きずられるような感じがしてそのまま前売券を購入した。


前情報はなく、どんな人なのかもわからない。会場内でちょくちょく展示されているプライベートな感じが強いモノクロの写真を撮った人が誰なのかも、地下の展示室外のソファでつながりにくいネットで調べて知った(鴨居さんと同居していたパートナーの富山栄美子さんだった)。


まるで西洋の道化師の仮面のような闇だった。仮面はぽっかりと穴が空いてなにを考えているのかわからず、もしかしたら空虚でなにもないのかもしれない。口元は悲壮感いっぱいで歪んでいるか、胡散臭い笑みをたたえているか。

そんな仮面みたいだなぁ、と思いながら、無機質の仮面にはない、もっと生々しくて肉々しくて、生きてる人がそこにいる、感じなのに、どこかどろどろしていなくて、澄み切っている。すごくヘンな感じだ。


解説でスペインにいたことを知る。そうしたら、とても納得してしまったことがあった。これは私の勘違いなのかもしれないけど、「スペインの太陽に焼かれたこそのまぶしさと影がある」と思った。

私が行ったスペインはもう20年以上前のことになるし、北部を東から西へ移動したので、南部のマドリッドやバルセロナの熱さや過酷さ、明暗の強烈さは知らない。しかし、あそこにいないとわからない空気感みたいなものはあるよなぁ、とぼんやり思いながら見ていく。


比較的暗い作品が多いが、綺麗な青に四角い教会が描かれていた作品があった。「あー、スペインで見た空の色に似てるなぁ」と思った。

なにも知らない者がこういうものを見ると、自分の経験や思いやその歪みを浮かべながら作品と対峙する。


最後に『週刊読売』に連載された陳舜臣のエッセイ『弥縫録 中国名言集』の挿絵がちょくちょくユーモラスで、ときに笑った。週刊で締め切りがくるのって大変そうだもんねぇ。




カフェでは「スペインの風を感じて」と副題のついた限定のケーキ・セットをいただいた。栗とオレンジのケーキと、アーモンドたっぷりの焼き菓子だ。

雨が止み、少し涼しい風が吹いてきたな、という頃で「暑かったけど、もう夏は行っちゃったね」と思いながら秋の雰囲気のお菓子を楽しんだ。

鴨居さんにちなんだ限定メニューにはもうひとつ「酔っぱらい」プレートがあった。スペインのおつまみセット(ピンチョスとはちょっと違うのかな)のかわいらしいプレートだった。しかし普段カフェではアルコールは提供していない。「酔っぱらえないじゃん!」とずっと思っていたが、このときはスペインのスパークリングワインの小瓶が提供されていた。むむぅ、知っていたら自転車で行かずにこちらにしたのにぃぃぃ。




没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く - 特別展 - [ひろしま美術館]

没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く - 特別展 - [ひろしま美術館]

ひろしま美術館は、印象派を中心としたフランス近代美術と、日本洋画や日本画などの日本近代美術コレクション、約300点を所蔵しています。


※撮影可能な作品あり。




前に行ったときは赤い部屋だったのに、今回は黒い部屋になっていた。
作品に合せて展示室の壁の色が変わっていて、雰囲気に浸れる演出で、好き。

デザート・セット~スペインの風を感じて

ひろしま美術館と鴨居さんは関わりがあって、ひろしま美術館でも鴨居さんの作品を何点か所蔵している。


アルコールを楽しむときは運転してはいけません