ことの発端は、今年の手帳の「野望リスト」を眺めているときだった。
毎年、野望リストと称して手帳の後ろのフリーページに「今したいこと」を書き、たまに見返している。
来年の手帳も9月に購入したし、少しずつ書き込みをしようとまずは今年の手帳をめくっていたのだ。
「寝台列車に乗ってないな」と思った。
今年の野望リストには
- 北海道に行く
- 寝台列車に乗る
- 今年は2回、旅をする
と書いていた。
北海道には6月に行った。2回目の旅行のために仕事の大波が過ぎたころを狙って、3日間の休みを取った。
今年は散財しまくりの年だったので、「2回目の旅は近場にしようかな」と、大阪の百舌鳥・古市古墳群を見に行くのはどうか、と考えていた。これももちろん野望リストに書いていたし、新幹線の予約は簡単なことだし、宿をどのあたりに取るかの見当もつけ、「お天気がよかったらレンタサイクルがよさそうだなぁ。古墳カレーをスコップスプーンで食べて、古墳野帳を買うの。ぐふふ」とにまにましていた。
が、具体的な行動に一切出ていなかった。
調べてみると、寝台特急の予約は乗車日の1か月前から始まる。そして「野望リスト」を見返したのは、旅のための休みの1か月と2日前のことだった。
「やばい。このままじゃ寝台列車の予約取れちゃう!」
この事実にめちゃめちゃドキドキした。興奮して落ち着きがなくなった。
寝台列車に乗りたいと思ったのは、どんどん寝台列車がなくなっているので乗れなくなる前に乗ってみたい、というのと、友達が何度か寝台列車に乗っているのをSNS越しで見ていたからだ。
「いいなぁ」と言ったら「乗りたいなら切符を取って乗るだけだ」と友達はこともなげに言った。
「いやいやいやいや、寝台列車ですよ!あの、人気があってなかなかチケットが取れない、寝台列車ですよ!!!!」
と私は内心すごく焦りながらその言葉を聞いていた。
なので、「このままじゃ寝台列車に乗れちゃうぅぅぅぅ」の事実をすぐには受け止められなかった。
ならば大阪行きの準備をもっとしてもよさそうだけど、なぜか気が乗らなかった。
もやもやする2日を経て、乗車日の1か月前がやってきた。午前10時から予約開始だが、いつもは午後から出勤なのにこの日に限っては午前から仕事だった。帰宅し夕食や片づけなどの用事を済ませ、午後8時、やっと自分の時間がやってきた。
予約開始から10時間。もうないだろう、と思いながら「記念受験」のノリでサイトの予約ページに入り、必要事項を入力していく。
「予約可能」の○が表示される。
ちょっと待て。
まてまてまてまてまてまてまてまて。
私は思わず、そのサイトを閉じた。
いやいやいやいやいや、ダメでしょ。こんなあたいが!あの人気の!寝台列車に乗っちゃ!
こういうものは好奇心のまんまで行動しちゃうあたいみたいな人が乗るのではなく、鉄道を愛し、あるいは長年の夢を叶える真のファンが乗るべきですよ!
興奮して、わけのわからないことを自室でつぶやく私。きっとちょっと怖い。
1時間後。私は再びサイトを開く。
「これで予約不可、ってなっていたら大阪だもんね」
私は寝台列車を諦めるきっかけがほしかったのかもしれない。同じように必要事項を入力してみると、やっぱり予約できるぅぅぅぅぅ。
これ以上、予約しない理由が見つからない。
ならば!と思い、今度は必死に予約した。
A寝台とB寝台の違いも、ソロとシングルの違いも、のびのび座席がなにかも、全然わからず、直感でどんどん決めて、どんどん入力して、途中時間がかかりすぎてやり直しになってめちゃめちゃ焦ったけど、手続きをし、予約完了した。
予想外に東京に行くことになってしまった。考えてもなかったよ!
急遽、東京国立博物館で開催されている「はにわ展」を見にいけることになった。そのあと、宿を取り、寝台特急に乗る岡山までの新幹線の予約をし、「はにわ展」のデジタルチケットを取った。
全部がまさかまさかだった。
つづく
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鉄郎にはなれなかった / 寝台特急サンライズ瀬戸 2024 (2)