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旅の匂いのする文章を読む

 



旅行記や旅のエッセイを読まなくなって久しい。いや、正しくは「そういう書籍」を読まなくなって久しい、かもしれない。

なんというか、あるときから本に対する魅力を感じられなくなってしまった。本が薄くなって高くなってすかすかして満足感が得られなくなった、と感じてしまうのだ。

あとはエッセイまんがが増えて、それもいいんだけど、特に旅行記は「コレヂャナイんだよなぁ」と思ってしまう。


そんな私が今でも読みたいのは楠田枝里子さんの「青いサーカステントの夜」だ。あんな旅行記が書きたい、とせっせとブログに文字を書いてみたこともあった。しかし、粘り強く書き続けることはできず、旅から帰ると印象に残ったことをいくつかピックアップして、それについてどばばばと勢いで短い文章を書くくらいで終わってる。

まぁ、「今しかない」という、どこか刹那的な考えをしているから、それでいいのかもしれない。


なぜ突然こんなことを書き始めたのかというと、友達が短い文章をネットプリントで発表したので、印刷して読んだからだ。いつも旅の匂いのする人だが、今回の文章も旅の匂いがしていた。旅について書かれているわけではないのに。

私は故郷を離れて生活したことがないので、そういう経験のある人にはもっともっとぐっとくるのかもしれない。その距離が旅を感じさせているのかもしれない。とぼんやり思いながら読んだ。


こんな文章は私には書けないし、そもそもものを見る視点が全然違うんだ。当然なんだけど、それが面白くていくつもいくつも質問したくなる。

そうすると、せっかくの文章ががちゃがちゃと騒がしく奥行きや陰を失って、あっという間にコドモのへっぽこ空気に侵食されてしまいそうで、私は黙って静かにしてる。











写真は2023年の旅。