今春、東京で「大吉原展」があると知り、「行きたい」と思った矢先に、扱うものがデリケートなもののせいか、プロモーションがよろしくなかったのか、あっという間にSNSで大炎上してしまった。
開催が危ぶまれるのではないか、と心配もしたものの今のところ中止にはなってなさそうだ。HPは一部変更されていた。またHPにて「『大吉原展』の開催につきまして」という文章も追加されていた。
私が見たいと思ったのは、その文章にもある通り、爛熟した文化だ。
金沢の茶屋に説明文に、訪れる人はただ行けばいいというものではなく、教養や歌や楽器などの芸事のスキルもなくてはならない、というものがあった。
キレッキレの芸事に長けた人たちを楽しませるために、空間も着物も挿物も絵画も調度も食事も香りもなにもかも、「更なるものを」を目指していったに違いない。
お座敷遊びができるような身分ではないのは重々承知の上だが、あそこでなにがあったのか、なにが供されていたのか、知りたい、と思った。
金沢で茶屋を2軒、見学した。べんがら、という赤い顔料で着色された土で塗られた壁は品がよく、そして妖艶で淫靡であり、私はその壁だけでも酔ってしまったようになり、見学したあとはしばらく無料休憩所で座り込んでしまった。
展示されていたべっ甲や珊瑚の挿物だけではなく、かわいらしい透かし模様の入った小さな出窓の飾りや襖の取っ手など、建物自体もたよやかだった。
きっと吉原はもっと派手でゴージャスなんだと思うけれど、とにかくそそるのだ。
あちこちで「元遊郭」である建物が残っており、いくつかは見学できるようになっている。
そこは今回のように大炎上はしていない。
やっぱりプロモーションかなぁ、と思った。
まずどぴんくのけばけばしい色の挑発的なデザインのロゴに「粋もへったくれもないなぁ」なんて思ってしまった。元禄の頃ならこれもよし、なのかしら。煽られる感じ。
そして削除されているようだが、「イケてる人は吉原にいた」などの文言や「お大尽ナイト」と名付けられていた花魁道中の見学など、「これはいただけない」とも思った。
芸事や文化が濃く深くなった場所でもあるが、春をひさぐ場所でもあり、女性たちの扱いがひどい場所でもあった。
最近、性的なことで問題や事件が多発している中、配慮が足りないなぁというのは強く感じた。
なので、この展覧会のプロモーションビデオと最初にHPを見ていると、だんだん見る気が萎えてしまった。
お大尽になりたくもないし、イケてる人になりたいわけでも会いに行きたいわけではない。なんていうか、そうだなぁ。ちょっとバブルのにおいのする訳のわからないノリと勢いは「やだなぁ」と思った。
主催者からの文章を読んで、少し「行ってもいいかなぁ」と思えてきた。
実際は年度末・年度初めで東京なんか行けそうにないのだけれど。この文章にあるように「爛熟した文化」と「女性差別の負の歴史」をふまえた展示、というのにも興味がある。