札幌の繁華街「すすきの」に「狸小路」という場所がある。
私は知らず、現地で知った。
「ススキにタヌキ? キツネじゃなくて?」なんてことを思ったのも書いておく。うーん、ダジャレのおぢさまみたいだ。まぁいいや。
成り立ちは知らないが、大きなアーケード街。道幅も広く、1から7まである。
観光案内所でもらった、今は使いすぎて穴が空いてしまった地図によると正式には「狸小路商店街」といい、東西900mも伸びている。1~7は「丁目」のようだ。
「商店街」だけれど、夜に歩くことが多かったせいか飲食店が多い印象がある。たくさんの店が、自分の店先にテーブルや椅子を並べていて、ある意味「オープンエア」じゃないけれどそんな雰囲気で、客はわいわいと街ゆく人を眺めながら飲み食いをしている。両サイドの店がそんなことをやっても、道にはゆとりがあって歩いていても「いやあ、楽しそうだなぁ!」と狭くて窮屈でイライラすることはないくらい広いのである。
札幌ではほとんど歩いていたが、びっくりするくらいしょっちゅう道を失っていた。方向音痴であることはよく知っているけれど、札幌の中心地は比較的「碁盤の目」のような、いやもうちょっと大らかか、サッカーゴールのネットの目のような、整った感じで道が通っていた。
路面電車の電停の名前も「西線14条」だったり、場所を示す看板に「南・数字、西・数字」とあったり、「京都みたいだな」と思った。
なので、道が複雑に入り組んでいるわけではなく、比較的迷子になりにくいのではないかと思われる。
な の に
私はしょっちゅう迷子になっていた。
札幌初日に「びかびか光るニッカのおぢさまに会いにいく!」と暗くなったすすきのを歩いた。
大阪道頓堀と言えばグリコの看板、というように、札幌すすきのと言えばニッカウヰスキーのおぢさまの看板だ。私はすぐに見つかるものだと思っていた。
この日の昼間はニッカウヰスキーの余市蒸留所の見学に行ったので、ますますおぢさまに会いたい。観光客の高揚感に加え、どこか中島みゆきの「地上の星」が聞こえてきそうな盛り上がりを抱え、旅先でひとりではあまり夜に出歩かないのに出かけてしまっていた。
Google マップスを眺め、てくてく歩いていくと出会うではないか、巨大なアーケード街が!
活気があって、楽しそうで、ちょっと酔ってわいわいしている人たちがたくさんいて、どこまでも続いているアーケード街が!
私は安易に「ま、こっち通っても大丈夫だよね」とアーケード街の中を通っていく。楽しい。なんだかお祭りのときの人出に似てる。でもあれほど多くないし、盛り上がりも緩やかだ。
で、気がつくと道を失っている。
ニッカのおぢさまに会うのは最初の地点から5分もかからないところなのに、私はすっっっっごい遠回りをし、言ってしまえば逆方向から斜めにどんどん離れたところに歩いていっていた。
その後も長いアーケード街にしょっちゅうぶち当たり「ま、こっち通っても大丈夫だよね」と思いながら、楽しくなってずんずん歩いていると道がわからなくなることが何度も続いた。
「なんなの?! 私はタヌキに化かされているの? 迷子になった私をタヌキは陰でにやにや見てるの?」
私は面白いほどあらぬ方向に歩いていて、道を失った。
最終日は朝から雨だった。まずは台風接近か?というくらい強風が吹き、雨は霧雨でびしょ濡れにはならないが傘は役に立たず、全身がしっとりして、気温が低かった。
「ここで風邪をひくわけにはいかぬ」と私は自己防衛を始めた。
そして「雨が降るなら屋根のあるところに行けばいいじゃん!」と私は狸小路商店街に向かった。
まず4から1に行き、その先の二条市場で焼いたホタテやカキを食べ、今回唯一のサッポロビールクラシックを飲んだ。その後、1から7まで歩いた。
7まで来るとちょっと疲れたので、カフェに入った。店内の本が読み放題の、ホテル内のカフェだった。
今回は一本道で、迷うことはなかった。思う存分狸小路を堪能した。楽しかった。
この大きなアーケード街の成り立ちは雪が関係しているのかなぁ。となんとなく考えてみるが、調べてはいない。
雪と言えば、福島に行ったとき、道路が赤くなっている箇所があって地元の人に「あれがなにかわかるか」と教えてもらったことがあった。
それは雪が道路に積もらないようにするため水が出てくる穴で、金属で錆びるためそのあたりが赤くなってしまう。
気がついたときには目をこらして札幌の道路を見てみるが、そんな穴がありそうな形跡は見つからなかった。
雪対策はどうなっているのかしらね。
私はタヌキと仲良しになれたかどうかわからないが、次に札幌に行くことがあったらまた狸小路商店街に行きたいな。と思うくらい楽しいところだった。こんなに惑わされているのにさ。