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山田玲司『非属の才能』光文社新書

2024/01/07




久々に本をまるっと1冊読んだ。

ネットにあがっている文章ばかり読んでいると、紙の本が読めなくなってしまった。

2023年の年末、私は意を決してがんばって読んだのが漫画家の山田玲司先生の『非属の才能』である。

2023年11月から私は玲司先生の動画やPodcastなどのコンテンツを聞きまくっていた。毎日毎日数時間聞いていた。

そしてやっと「今なら読める!」と思った。


この作品を知ったのはもうずっと前のことだ。

Twitterかなにかで流れてきた。

その頃の私はどこでも浮いていた。今でもそう変わらない。

Twitterでは「クラスタ」という共通な好きなものや関心のあるものでつながる集団が出てきていた。そしてネットとリアルが重なっていてよく「Twitterで『今日、これから飲みにいきませんか』と誘ったらフォロワーのなんとかさんが来てくれた。楽しかった」というツイートもがんがん流れてきていた。私はそれを「東京だから成立するよね」と思いながら見ていた。

そうは言っても私も自然とどこかのクラスタの中に入っていったが、どこにもなじめずにいつもそっと離れてしまった。

なにをやってもひとりでいる自分にほとほと愛想を尽かし、でも寂しいし、どうしたらいいんだろう、というときにこの本を紹介するツイートで出会った。

冒頭に「みんなと同じ」がしっくりこない人向けだという文章があるのだれけれど、そこに

おめでとうございます。 あなたには“非属(ひぞく)の才能”があります。

と書かれていた。

これはとても衝撃的だった。そして救いだった。

私は人とつながれない、人間関係がまともに持てない人じゃない。“非属の才能”、どこにも属さない才能がある人なんだ!

とすこんと腑に落ちてしまった。



たしかネットで全部読めたのだが、時間がかかりそうなのと、やっぱり作者さんに還元したいと思い、本屋で紙の本を購入した。

しかしそのときの私には生々しすぎて、冒頭だけ読んでずっと棚にしまわれていた。その後も何度かトライしてみたのだが、やっぱり読めず、2023年の年末にやっと読めた、というわけだ。


玲司先生がYouTubeかなにかでこの作品について、「この頃はとんがっていたよなぁ。今ならもうちょっと違う書き方になっているだろうなぁ」とおっしゃっていた。

最近の動画やPodcastを聞いている私も「そうだろうなぁ」と思った。玲司先生はまた「でもあの頃じゃないと書けない文章だよなぁ」とおっしゃっていて、それに対しても「そうだろうなぁ」と私も思った。


みんながそうだから。周りがそうだから。日本の常識がそうだから。

というものから離れ、自分が自分であるためにどこにも属さず、時にはひとりでいることについて、玲司先生はこの本の中で「そのまま突き進め」と叫びながら応援している。

過去の著名人や自分のことを引用して、声を枯らして叫んでいる。


今回、私がじんときたのは「第5章 非属の扉をこじ開ける方法」だ。

「属」を外す方法が書かれている中で、やはり「旅に出る」ことが出てきた。

コロナによる行動の制限がなくなり私も旅を再開したが、最近は旅であまり孤独を感じることがなくなってしまった。

やはりスマホを持って、どこでもネットにつながれてSNSを読んだり、LINEで友達に自分が見たものの写真を送ったりしているからかもしれない。

どこに行くかも、それがどこにあるのかも、どうやったら行けるのかも、スマホひとつで全部終わってしまう。そこまで必死になることもない。

あとは自分が「こうでなくてはならない。失敗は許されない」という呪縛からちょっとゆるゆるして「失敗してもなんとかする方法があるもんね」と解放されたのもあるかもしれない。

そんな中でもひりひりした旅のことを思い出す。

ネットもスマホもなにもなく、ほんとに孤独をいやというほど味わったのはガイドブックを持たずひとりでスペイン巡礼に行った旅だよなぁ、などと過去の自分の旅を特に強く思い出していた。


本の終わりのあたりに、孤立や孤独にはなるがなにもずっとひとりじゃないんだよ、というくだりがある。同調ではなく協調性を持て、というところにも私の救いがあった。

友達100人いなくても、気の合う数人の友達とくだらないこともくだることもあれこれだらだらとしゃべり、ときにはしゃべらず、うまいもの食べてお茶やお酒なんかを飲んで、たまにLINEかSNSで関わって、自分が好きなことして誰かの好きなことを眺めて「それいい!カッコいい!」と思ったり「古墳を見に行きます!」と片道40分歩いたりすればいいんだ。と思った。



2023年に見た玲司先生の動画で、この本の編集者・柿内芳文さんと話すものがあった。そのときに初めて「本の表紙」だと思っていたものが、実は「本の帯」だったことを知り、衝撃を受けた。だって本の帯だなんて思わないんだもの! いや、びっくりよ!


びっくりついでにもうちょっと調べていたら、この本、無期限で全文無料公開されたままだった。びゃっ!

関心のある人は読んでみてね。


ちなみに今、私が聞きまくっているのは玲司先生と俳優・伊澤恵美子さんとの脱ぎ脱ぎトークが炸裂する恋愛全肯定プログラムの「山田玲司とバグラビッツ」というPodcastだ。

AppleのPodcastアプリで聞いているので、iPhoneアプリ「ジャーナル」のおすすめに視聴したバグラビががんがん並んでいる。

頭が恋愛モードになって、楽しい。

恋愛についてのプログラムだけど、日本の現代史からサブカル、ジェンダーなどさまざまな分野のことに触れていて、それも面白い。



■参考